電力危機には大局観を!
昨今、電力危機が叫ばれて久しい。特に今年は6月早々に梅雨が明け、「梅雨明け10日」の高気圧に晒された日本は36℃以上の猛暑に晒され、電力需給がひっ迫した。国は「節電」を呼びかけ、国の方針にまじめに従う産業界、国民のおかげで何とか停電を避けることができた。経産省はもともと7月からを夏の需給ひっ迫機関と位置づけ、休止火力の再立ち上げや「節電」を国民に呼びかける予定で、実際猛暑が一旦陰りを見せた7月に入ってから、なんともピンぼけな「節電」と休止火力の再起動が始まった。
時まさに参院選の最中で、どこかの党は原子力を全廃して太陽電池発電を拡充しろとか、はたまた再エネの拡充を声高に言いながら、エネルギーコストの削減のために「FIT賦課金」を無くせなど制御不能な政策を披露している。
今夏の電力危機を乗り切るために休止火力の赤穂火力や姉ヶ崎火力の立ち上げを行ったが、重油やLPGを燃料として消費する40年以上経った老朽火力発電所を年間わずか100時間未満の稼働のために立ち上げるのは、経済的な損失はきわめて大きい。昨年秋、今年の夏場を乗り越えるために発電事業者の休止火力の電力と小売業者の間でマッチングを行ったが、双方コストが折り合わず、時間前市場としての契約成立には至らなかったようだ。そのため需給調整市場での電源確保のために、エネ庁は送配電会社を経由し新たに120万kwの募集を行い、更にkWhの確保を行った。
節電の呼びかけをすれば「なんとかなる」というのは大間違いである。経済が立ち上がらない中、経済活動に水を差す電力削減要請は本末転倒である。ウクライナの影響は確かに突発事項かもしれないが、そもそも国の安全保障の根幹である「エネルギー」と「食糧」確保の重要性を蔑ろにしたことを猛省しなくてならない。幸か不幸か日本にエネルギーを消費する工場を新たに作ろうとする外国企業は、国が台湾に三拝九拝して成立したTSMCしかないが、電力が不安定な国に外国企業が工場を作るインセンティブは無い。最も、円安で労働者の賃金がアジア各国と変わらなくなり、人件費を削減するために日本に進出するという企業もあるかもしれないが。
経産省エネ庁の総合資源エネルギー調査会 電力ガス事業分科会 電力ガス基本政策小委員会(名前が長すぎる)で電力危機対応や電力システム改革のフォローアップを行い、エネ庁の作成した資料を基に、委員の先生方が議論をしている。委員は学識経験者や関係機関、弁護士などが含まれ、2016年から開催され今年の6月30日の開催で51回を数える。資料はエネ庁のホームページで公開され、議事も動画で閲覧可能である。資料を作成するエネ庁の若い官僚には頭が下がるが、夏冬の電力危機、温暖化対策、ウクライナ問題など周囲をめぐる環境が著しく変化する状況下で、他国の制度を基に作り上げた電力システム改革を大局観をもって見直すべき時期が来たのではないか? 米国はNG含めてエネルギー資源が豊富にあり、欧州はグリッドが面で支えられていて、その中にはフランスの様に原子力発電による電力輸出を行っている国も存在する。その反面、日本はグリッドは基本的に串形でおまけに四つの島に分かれ、更に50Hzと60Hzに東日本と西日本で分断されている。同じ土俵で議論するのは限りなく無理があることを十分に認識し、国家百年の計で日本のエネルギーの在り方、電力システム改革の反省をすべき時期であろう。
地球温暖化対応の優先度を見直すべきである。あるいは優先度を維持するなら原子力を復活すべきである。ポピュリズムに迎合すべきでない。
再生エネルギー特に太陽光、風力の位置づけを明確にして、出力に見合った蓄電池を具備することは経済的に成り立たないことを表明し、国民に理解させるべし。
需要に見合った供給ができるよう電力供給責任を果たすべき。節電要請は止める。
従い、電力供給責任を明確にすべきである。
供給に不安なLNGの代替として安定的に供給可能な石炭を積極的に活用すべし。ドイツはすでに褐炭復活を宣言している。環境一派の多い欧州でも背に腹は代えられないことは国民に理解される。ポピュリズムでは生きてはいけない。
水素は確かにそこにあれば燃えても水しかできないクリーンなエネルギーである。それをどうやって作るのか、作った時にどのくらいエネルギーを無駄にしているのか、また製造時にどのくらいCO2を生産しているのかを語らず、水素をエネルギーの救世主と言うのは余りにも片手落ちである。
異常気象が発生するとすぐ地球温暖化、CO2のせいだと声高々に言う機関は逆の声にも耳を傾けること。
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