飛行船は進化する!空の地球温暖化対策

国連の国際民間航空機関(ICAO)によれば、航空機から排出される地球温暖化ガスは、世界全体で排出されるガスの2%超を占めているそうだ。ICAOでは2020年を基準として以降はCO2の排出量を増やさない取り決めをしている。航空機分野でも様々な形で、燃費の改善、電動化などの検討が行われている。その中で、地味ではあるが飛行船が解決策の一つとして文字通り、浮上している。

写真はドイツの飛行船ツェッペリン号

飛行船はヘリウムガスによる浮力を使う為、普通の航空機の様に浮上に燃料を使わない。従って、輸送量に対する燃費で見ると、通常の航空機の1/10以下と言われている。但し、速度は遅く(ツェッペリン号の速度は135km/h)、大きさの割には輸送能力も限られる。更に、巨大な躯体を管理運用するのは非常に大変ではある。しかし、移動に使う以外にも、上空に長時間留まる事が出来る事を利用して、通信基地や、監視設備につかう計画が既に様々に進められている。更に、新たな開発も地道に行われている。

◆ 飛行船グラーフ・ツェッペリン号による世界一周

飛行船で有名なのは、1929年のドイツのグラーフ・ツェッペリン号による世界一周飛行だろう。飛行船の可能性を広げる為にドイツの航空工学エンジニアのエッケナーが世界一周飛行に挑戦し、約3週間で世界一周を果たした。当時の飛行機の限界をはるかに超える長距離・長時間の飛行性能を見せ付けた。

ツェッペリン号(LZ127)は全長235m・重量が約80トンもある巨大な飛行船だ。推進動力にはレシプロエンジンが使われており、燃料はプロパンと水素の混合ガスだった。

米国ニュージャージーのレイクハーストを出発したツェッペリン号は大西洋を横断しドイツに寄った。その後ドイツからシベリアを経由して東京に向かったのだ。レーダーのない時代、天候によって視界が遮られる状況下では、山にぶつからないように慎重にルートを選びながらの飛行だった。ツェッペリン号は高度2000m以上に上昇する事が難しかった為、高度管理には細心の注意を要した。結局、ドイツから東京までは、約100時間を要したと記録されている。距離が12000㎞、平均時速は120㎞という結果だった。日本の霞ヶ浦で動力用のガスを充填し、5日後に米国に向かった。ロスアンゼルスを経由して、出発したレイクハーストに到着したのは出発から丁度21日目、総飛行距離は31,000㎞にのぼる冒険だった。

下の写真は、その際に茨木県土浦市に寄った際のもの、三菱マークが見えるが、燃料ガスの供給を同社が行った(写真:土浦市HP)

◆ 最新の飛行船は

さて、では、最新の飛行船に目を向けてみよう、ロッキード・マーチン他、様々な企業が地道に開発を進めている。スピードが重視されるばかりの航空機ビジネスとは異なる、新たなニーズが醸造されてくる可能性がありそうだ。

下の写真は米国ロッキード・マーチン社のハイブリッドエアーシップ(ロッキード・マーチン社HPより)

全長は300FT(90m)積載重量47,000pounds(約21トン)。船体のボトムには着陸用のエアークッション装置がある。飛行船と航空機の中間という意味でハイブリッドと呼称しているようだ。当初は軍事用の、大規模長距離輸送目的に開発を進めてきたものだ。

ロッキード・マーチン社以外に、民間のラグジュアリーな空の旅を狙った開発を進めている企業もある。Hybrid Air Vehicles 社のAirlander10(下写真:同社HP)などがそうだ。「旅を考え直そう」というコンセプトでゆっくりした空の旅を提唱している。飛行時間は最大5日、ペイロードは10トン、飛行距離:最大7000㎞、最高高度:6000mとなっている。豪華な船内イメージ図も公開されている。クルーズ船の空バージョンというところだろうか。

飛行船は動力が少ない一方で、図体は大きい。これを逆手に取れば、柔軟性のある最新のペロプスカイト型の太陽電池と組み合わせれば、発電しながら自立航行が出来る飛行船の実現も可能になるように思う。

EneCockpit

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