海運は帆船大航海時代・風力推進へ
15~16世紀、マゼラン・バスコダガマらが世界に帆船で繰り出した大航海時代には帆船が活躍した。というよりも帆船しか輸送手段はなかった。現在の海運は、再び風力を使った推進方法に立ち返りつつある。自然エネルギー先祖還りは進むかもしれない(写真出典:仏AYROプレス発表資料より)
海運はコロナによる影響も限定的で、堅調な伸びが見込まれている。2050年の海運で発生する二酸化炭素は大きく拡大し、IMO (国際海事機関)の予想では、2007年の3倍になる可能性があるという。IMOは2030年の二酸化炭素削減目標を2008年の40%削減と掲げた。このような背景から海運での自然エネルギー利用が待ったなしで検討されている。
風力推進装置を実装した世界初の大型船は2022年に就航する商船三井の石炭運搬船となる。硬翼帆式風力推進装置(ウインドチャレンジャー)を搭載し、大島造船所で建造される。日本と米国東海岸航路で約8%のエネルギー削減を計画している。東北電力向けの石炭を輸送する船が自然エネルギーを活用する事で、全体としてCO2排出の低減を実現するという構図だ。(写真出典:商船三井資料)
そもそも19世紀まで海上輸送の担い手は帆船だった。地球温暖化対策問題でクローズアップされている温度上昇が始まる前までは、帆船が頼りだった。
19世紀前半には蒸気船が登場したのだが、船足も遅く、燃料として石炭を積むため、肝心の荷物の積載量が限られて、燃料経費もかさむ。このため、蒸気船が登場しても、帆船が主流の時代はしばらく続いた。
特にクリッパー船と呼ばれる船足の早い帆船が登場して、有名な東インド会社などが中国・インドから英国にお茶などを輸送していた。広州~喜望峰~ロンドンの輸送時間は約3か月との記録が残っている。風が良ければクリッパーは17ノット(時速31km)というかなりのスピードを出すことが出来た。代表的なクリッパー船に英国のカティサークがある。ティークリッパー船と呼ばれ、お茶の輸送につかわれた帆船だ。
クリッパーが登場した背景には、蒸気船の登場も絡んでいる。クリッパーは船型がシャープで直進は良いが、港での取回しが難しい。これを補うのが、港の蒸気船タグボートだった。
しかし、1869年スエズ運河が登場すると、帆船の時代は終わりを告げる。蒸気船の進歩もあるが、スエズ運河周辺では風が吹かず、帆船が通行する事が難しかった事も理由だった。(写真は実帆走しているカティサーク)
このように見てくると、船に風を利用するというのは自然な流れであり、今後ますます実用化が進むだろう。風の利用推進によって、航路は地図上の最短ルートではなく、風速と風向を考慮したルートに変更となっていくだろう。
海上輸送に風の自然エネルギーを利用するという事は、人類が船を初めて使始めた古代から脈々と続いてきたもので、人類の海の文化史、そのものと言える。
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