太陽光発電2030年、森林破壊のメガソーラーは不要
今回は太陽光発電にフォーカスをあてて整理してみたい。
日本では森林を伐採をしてメガソーラーの建設があいつでいる。FIT(Feed In Tariff)と言われる導入時の高値での電力買い取り制度を利用した投資活動によるものだ。地球温暖化対策という大義ではなく、投資と利益回収という経済的な視点から投資筋が飛びついたという経緯がある。FIT制度は終了したが、2022年からはFIP(Feed In Premium, 売電価格上乗せ制度)が開始される。まだ大規模伐採を前提としたメガソーラー計画は全国で進められている状況にある。他方、自然林保護をSDGsとして取り組む必要がある。森林伐採を伴う太陽光発電の建設は本末転倒であり、考えなおすべきだと強く感じる。メガソーラー事業運営企業がホームページで森林を大規模伐採して建設されたメガソーラーを自慢げに表示しているのを見ると、大きな疑問が湧いてくる。
日本は世界の中でも太陽光発電が普及している国だ。2018年実績で日本の太陽光発電の規模は、中国、アメリカに継ぎ、世界第3位となっている。 2019年度の日本の再生可能エネルギーの中でおよそ37%、すべての電源の中で6.7%を占めている。
経済産業省が7月に発表したエネルギー基本計画の「野心的な見通し」によれば、2030年には再生可能エネルギーを全体の36~38%に伸ばすとなっている。この内、太陽光は15%程度となっている。 太陽光は日本では既に導入が進んでおり、拡大しやすいとの見地からこの数値を設定された模様。 さらに、2030年時点の太陽光発電のコストが1kWhあたり8円台前半~11円台後半と、原子力や火力発電より安くなるとの試算を示した。しかし、このコストには建設や単独運営を前提にしたもので、送電網につなげる場合は不安定な太陽光発電を安定化するためのバックアップ体制のコストが入っていないとの批判が相次いだ。
それを受けて、再度経済産業省はワーキンググループによる検討を行い、太陽光発電や風力発電という不安定電力を電力系統に受け入れて安定化させるための費用も含めた試算を公表した。その結果は、太陽光発電のコストは18.9円/kWhと一転して火力・原子力・風力にくらべても一番高いという事になった。
この顛末を見るに、比較的導入の進めやすい太陽光発電を軸にすることで目標の達成を進めたいという意図が感じられる。一方、太陽光発電は日中しか発電しない、かつ天候に左右される為、安定化する為に、太陽光発電の変動を火力発電所等で吸収するなどの追加策が必要となってくる。
太陽光発電が普及してきた背景には2012年より、FIT(Feed In Tariff: 導入時固定価格買取制度)が導入されて、他の電力より割高で太陽光発電の電力を買い取り、投資を促進してきた経緯がある。但し、このFITは2019年を最後に段階的に終了し、2022年からはFIP制度が開始される。今後は再生可能電力としての付加価値を付けた市場競争の電力価格にFIPのプレミアムが加算される形で取引されていく事になる。
太陽光発電普及で考慮しておかなければいけない課題は次の二点だと考える。
1・昼夜差・天気による発電量の差が大きく変動調整の為の整備が必要
太陽光発電の普及が更に進むと、天候による変動幅も大きくなる。この変動をどのように調整するか、太陽光発電の普及に併せて整備が必要だ。変動調整には、太陽光発電が落ち込んだ場合のバックアップ補給電力の確保と、逆に太陽光が需要を超えて過度に発電した場合の余剰電力の処理という二つの面の対応が必要だ。太陽光発電が普及している九州では、2018年に太陽光発電の供給が需要を超える状況となり、太陽光発電からの供給制限指示が出される状態となった。しかし、夜になれば、太陽光は機能しない為、電力は他の電力設備から供給を受ける必要が出てくる。この為、負荷調整として火力発電所の維持が当面不可欠となる。既に、一部の撤去予定だった古い火力発電設備を残す必要も出ている。余剰電力を蓄電設備に貯めるのも解決策の一つとはなるが、長雨などで太陽光が長期に戦力離脱するような蓄電量を確保するには相当な準備期間が必要だろう。
太陽光の普及には、この電力変動に対する調整機能を、どのように効率的に構築していくかを併せて考え、構築していく必要がある。
2.メガソーラーによる環境破壊
メガソーラーは乱開発などの環境破壊につながるリスクを抱えている。奈良県平群町では、メガソーラー開発で48ヘクタールの山林が伐採される事態になり、住民1000人から差し止め請求が出され、申請に虚偽があった為、工事停止命令が出された。伐採と盛土によって太陽光パネルを設置するという計画らしいが、伊豆の土石流を思い起こさせる。森林には二酸化炭素の吸収と土地の保安林という両面の役割がある。
法制的な制限に限界がある為、条件が満たされれば乱開発を止める方策がないのが現状だ。そもそものメガソーラー、ソーラパークという構想は、砂漠・原野・遊休地・休耕農地なの有効活用であったはずだ。山林を広範囲に伐採してのメガソーラー開発企業が環境を守ると謳っているのは強い違和感を感じる。日本の山林を乱開発してまでメガソーラーを設置するのは本末転倒。このような森林伐採によるメガソーラー設置を進めている企業体には、海外の投資会社が絡んでいるケースが多い。宮城県には500ha規模の開発計画があるが、これもスペイン外資が絡んでいる。投資と回収という事しか考えていない事業体にはメスを入れるべきだ。2021年の政府のエネルギー検討会のワーキンググループ意見交換では、大規模太陽光開発が地元の理解を得る事が難しい状況になりつつあるとの報告がされている。地元の方々も、闇雲に自然エネルギー利用は良い事という概念から踏み出して、冷静になりつつあるのだと少し安心する。
写真はカリフォルニアの砂漠に建設された世界最大規模の太陽光発電所Topaz Solar (出典:Berkshire Hathaway Energy HP)
写真の世界最大規模のメガソーラーは、米国のTopaz Solar Farms(Berkshire Hathaway Energy)、カリフォルニア州の砂漠に建設された550MW規模のものだ。このような場所は日本にはないが、日本では工場・オフィスビル・住宅・休耕地など分散設置するなど、工夫のしようはあるはずだ。
太陽光の促進については、政府も新規住宅には60%に太陽光設備を設置するなどで普及を促進するとしている。山林の伐採ではなく、すでに人が生活している地域のビル・住宅・工場設備などに分散型で設置を進め、蓄電装置をセットにすることで、災害時の電力維持も図るという方向に向かうべきだ。太陽光パネルも開発が進み、ビルの壁面や局面にもフレキシブルに設置できるようになってきた。発電効率も向上している。工場・オフィスビル・住宅など活用できる場所はいくらでもある。
太陽光設備を作るのは物理的に簡単だが、森林を復元するには大変な努力と時間がかかることを考えて欲しい。
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