SDGsの意味・相反する目標とビジネスの種

SDGsとは?

ここ数年SDG’sという言葉が世界を席巻している。SDGsというキーワードは政治に経済に社会生活に、様々な場面で登場している。SDGsの認証やコンサルタントも大流行だ。ぼんやりとは理解しているようで、つかみ所がないようにも見える。そもそも、この取り組みが必要となった歴史的な背景に立ち返って、整理してみたい。

SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称。2015年9月の国連サミットで採択されたもので、国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた目標だ。

17の大きな目標と、それらを達成するための具体的な169のターゲットで構成されている。

17の大きな目標には貧困や飢餓という問題から、エネルギー気候変動という地球規模のものまで幅広い項目が設定されている。先進国・途上国の区分ではなく、各国に幅広く関連する項目だといえる。

このSDGsは何故採択されたのだろうか、

まず、ここ数百年の人類による活動によって、地球環境は人類が安全に暮らし続けられる限界を超えつつあるという認識が共有された事だ。この地球環境限界の問題は既に1970年代から議論が始まっていたが、乱開発の進行や最近の地球各地で頻発している異常気象など、いよいよ現実のものとして認識される事態になったという残念な事実がある。

SDGs採択に至るまでには様々な議論や政治的な反発などもあったものの、ようやく、これまでの「発展」という観念から少し謙虚に人間の「持続可能な開発」とトーンを変えた。国家という枠組みでは解決できないグローバルな連動関係について各国の認識がようやくまとまったものといえる。

そもそも人間の経済活動によって、地球環境にも人間社会にも歪が生じていると認識された訳なのに、「Sustainable持続続可能」と「Development発展開発」とは矛盾するワーディングにも思える。様々な利害関係を有する国々を納得させる為の、都合よく考えた、苦肉のワーディングか?

実際に17の目標は個々に見れば反対する人もいないだろうが、それを実現していくプロセスでは相反するものがいくつも見て取れる。また、各項目が複雑に絡み合っている。

SDGsの17の目標は何か? 

1 貧困の撲滅

2 飢餓をゼロに

3 すべての人に健康と福祉を

4 質の高い教育を皆に

5 ジェンダー平等の実現

6 安全な水とトイレを世界中に

7 エネルギーを皆に。そしてクリーンに

8 働きがいも経済成長も

9 産業と技術革新の基盤を作る

10 人や国の不平等をなくする

11 住み続けられるまちづくり

12 つくる責任、つかう責任

13 気候変動に具体的な対策を

14 海の豊かさを守る

15 陸の豊かさを守る

16 平和と公正をすべての人に

17 パートナーシップで目標を達成する 

このように見ると、これらの目標は人間の社会生活活動のほとんどすべてに絡んでくる。

総論としては、文句をつけるべきものは何もないようにも思えるが、全部を一緒に進めるという事は簡単ではないだろう。

人の生活を質素に電気・ガス・水を節約して、食事もつつましく、派手な生活は止めて、、という緊縮生活をすれば、エネルギーも節約でき、二酸化炭素も減る方向にはなるだろう。しかし、経済が回らず貧困が拡大し、世界の政治情勢も悪化、難民の拡大、というシナリオにもなり、SDGsの目標である「貧困や飢餓からの脱却」という観点からは逆行する。

一般の人々にとって、SDGsとは社会貢献的に捉えられている面が強いかもしれない。しかし、SDGsの目標達成の為にには、経済活動とのバランスが取れる事が必要だ。既にSDGsはコンプライアンスと同じような扱いになりつつある。農水産業・製造・サービス、どれをとっても、SDGsの価値観に合ったものが、市場では優先される。SDGsという付加価値の有無が、市場に受け入れやれらすいか否かのバロメーターになってくる。当然ながら、優秀な人材もSDGs目標への取組を明確にしている分野や企業に集まっていく事になるだろう。

SDGsが経済活動と密着して進行し、ビジネスのネタになっている事自体は、悪い事ではない。しかし、方向を誤ると、経済活動が優先されて、投資インセンティブを与えるイルージョン的な仕組みが出来るだけで、結果的には、地球や人類社会は何も改善していないというような事にもなりかねない事を心配する。

特に、本EneCockpitで扱うエネルギーは、多くの目標に関連してくる共通的な要素で、かつビジネスにも直結する。歴史的にも戦争や国際紛争にもつながってきた重要な事項である。

例えば、自然エネルギー・再生可能エネルギー開発によって生じた環境破壊など実際に矛盾点が露呈してきたものも多々ある。

ブラジルのバイオエタノール生産拡大による、アマゾン森林の消失・砂漠化。

世界各国のシェールオイル・ガスの生産による地下水系の汚染。

森林伐採によるメガソーラー建設。等

さらに、個人の生活という観点から考えると

呼吸をする、食べる、動く、移動する、仕事をする、寝る、遊ぶ、・・・・すべての生活・生命維持のサイクルにエネルギーが関連している。今の生活スタイルでいいのか?、政府や企業の活動は正しいのか? 各人が考えていかねばならないだろう。




EneCockpit

地球環境エネルギー問題を中心とした情報メディアです。 エネルギー・電力・環境インフラの専門家チームにより、 ニュートラルな立場からこの問題を考えるヒントを発信しています。 SDGs・地球温暖化の問題は、人類社会の存続につながる重要な問題です。 多くの方に、この問題を身近に感じて頂ければ幸いです。

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